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2007/08/21
雑感:参議院選挙
 北海道北部の人口2万3千人余りの小都市「士別市」の市議会議員に昨年4月に初当選後、議員の身分となってから、あっと言う間に1年が過ぎた。

 議員バッジは議場に行く以外、滅多に着けた事が無い。と言うより着けるのを忘れているのが本当の所である。
 夏場の今は、普段は相変わらずTシャツ姿である。ネクタイをする最も多い機会といえば葬儀への参列である。

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 ディベートという手法がある。
決められた議題に対して肯定・否定の2つの立場に分かれて、それぞれがいかに説得力ある議論を述べるかを競い合う一種のゲームである。

 例えば、「世の中に酒は必要か不要か」と言うお題が出たとしよう。
 仮に私が必要派に当たったとしよう。
そこで何故必要かを論理的に訴えるのである。

@酒税という貴重な国・地方の財源が入る
A酒造メーカーから販売店まで大きな経済効果と雇用の場を生んでいる。
B呑み屋・歓楽街などの経済波及効果は計り知れない。
C何より百薬の長であり、適度な飲酒は健康面にも精神衛生上もすこぶる効果的である。
   番外編では
D酒でも呑まなければやってられない時が少なからずある。
E異性を口説く必須のアイテムである
F禁酒をするとウーロン茶などの価格が高騰する。
Gソルマック・ウコン製品が売れなくなる。
H肝臓医がおまんま食い上げになる。
  ・・・など酒呑みの私にとっては賛成論はいくらでもある。

 非常に不本意だが、もし不必要派の立場になったとしたら、以下のように訴えるだろう。

@脂肪肝、肝炎、肝硬変、胃炎、膵炎、高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、痛風などなど酒が原因となる病気は多く、その医療費の縮小により、酒税財源が無くなったところで相殺される。
A飲酒による肥満が大きく減り、万病のもとであるメタボリック症候群も激減する。
B怪しげな歓楽街も消え、安心・安全な街が戻ってくる。
C家計の出費が減り、余裕が出来、新たな消費が創出される。
   番外編では
D酒の勢いでしてしまう事が無くなる。
 (大抵はろくな事をしないのである)
E飲酒運転をしたくても出来ない。
F今夜は無礼講!と言って部下に悪口を言われる事が無くなる。
G二日酔いが無くなるので当然迎え酒も不要となる
Hノンアルコールビールどころかノンアルコール日本酒やノンアルコール焼酎などの新製品が開発される。
(ノンアルコール酎ハイとソーダー水との区別が難しくなるなどのいくつかの欠点は認めなければならない)

ディベートを真剣にされている方には非常に申し訳のない例題であったが、このように、真ぎゃくの立場でもいくらでも屁理屈を言えるのが人間である。

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 さて、参議院選は、民主党の圧勝と自民党の大敗という結果に終わった。

 政治の世界は正にディベートの世界でもある。

 政権を維持したい与党、政権交代を狙う野党、どちらも自らの政策が最善とし相手側の政策の矛盾点を探しだしてこき下ろす。良くも悪くもこれが議会制民主主義の世界で、最終的には多数決で決まるのである。

 あのウィンストン・チャ−チルが、「実際のところ、民主制は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた、他のあらゆる政治形態を除けばだが。」 という名言を残している。
 つまり民主主義程酷い制度はないが、他に比べれば、民主主義はまだましだという事である。

 日本は当たり前ながら民主主義国家である。しかし議員以外の国民の日常の生活で多数決を問う場面は皆無に近い。
 例えば町内会の役員会での事業計画を決める時に一々多数決をとるだろろうか。
 様々な意見が出たとしても、最大公約数的なものに調整したり、会長の思いが尊重されたり、結構奇抜な意見が出ても「ためしにやってみるか」などと取り入れらる事もあり、多数意見・少数意見もその時々の流れの中で取り入れられ、決して多数決などとらなくても、不思議と決まって行く場合が殆どである。

 しかしながら、政治の世界は法律や条例という決め事を決定する機関であり、その決め方も法律という決め事により決められているのだから、町内会のように自然体で何となく決まったと言う訳には残念ながらいかないのである。

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 今回の参議院選後の各種機関の調査によると、投票行動を左右した最も大きなポイントはやはり年金記録漏れ問題だった。

 昨日今日始まった訳ではないこの問題を現政権のせいだけにするのはいささか可哀想な所もある。

           UP

 どこが政権を握っても、この記録漏れ問題は、最善で迅速な解決をしていくしかないのである。
 それよりも年金はもっと根源的問題を解決しなければならない時期をとっくにむかえている。

 自民党は厚生年金と共済年金の統合を計画している。
 官優遇の共済年金の厚生年金化とも言えるこの方針は一歩前進だが、4割を超える国民年金の未納者問題には、何ら解決策とならないのである。

 一方、民主党は現在の消費税5%を全額基礎年金の財源にすると言う。
 国税収入の約2割を占める消費税を年金財源に充てるという。しかも消費税の5分の1にあたる約2.5兆円は地方財源でもある。
 無駄を減らす事により可能と言うが、既にピークの半分ほどとなった公共事業、益々増える社会保障費などを考えると、格差社会解消を訴える同党の基本政策との整合性も含め、この巨額な財源が年金会計にすんなりと移行出来るとものとは理解しづらいのは私だけだろうか。

 本来、国政選挙では、年金問題であれば年金記入漏れ問題よりも、もっと根本的な制度改革で争うべきだが、それぞれ中途半端であり、有権者もあまり注目していないのが何とも残念である。

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 一昨年の”郵政解散”では自民党の圧勝で終わった。
 そもそも郵政民営化は、殆どの国民に何ら直接の不都合はない問題である。
 時代の流れでもある非効率な行政機関の民営化の是非を、解散総選挙のテーマにした訳であるから、多くの国民がOKを出す結果となった。

 一方、今回のように年金記入漏れ問題のように、多くの国民に直接関わる事への反応は、与党にとって見事に手厳しい結果となったのである。
 同じ様に、消費税の導入や税率アップに関わった全ての国政選挙は与党の惨敗で終わっている。

 よって与野党共に、選挙前の増税論議はタブーとなってしまった。
 何とも無責任極まりない話である。

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 日本は国・地方を合わせた長期債務は770兆円にのぼり、先進国の中でも突出した天文学的残高であり、今後の少子高齢化社会の加速を考えると、医療・介護などの社会保障費関連費を中心に膨らむ一方であり、無駄の削減などで財源をひねり出し、なお且つ債務も減らしていくマジックが不可能な事は、どの国会議員でも分かっている。

 日本の消費税にあたるヨーロッパ各国の付加価値税は、標準税率で20%前後が普通となっている。

 歴史上例を見ない最速で少子高齢化が進む日本が、いつまでも5%に据置き、借金を孫・ひ孫に押し付ける制度が続くはずも無いのである。

 年金も合わせた総合的な社会保障制度と国家ビジョンをもった歳入・歳出構造の確立の論議がほとんど不毛な事が寂しい限りである。

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 さて、参議院選挙の結果、与党は過半数を割った。
 これだけ激減すると、参議院の過半数を今後の選挙で目指しても、うまく言っても6年後かもしれない。

 一方、民主党はこの勢いで解散総選挙に持ちこみ、仮に過半数を取って政権を取ったとしても、参議院では今の所過半数に届いていないのである。
 つまり、政界再編などがなければ今後しばらくは不安定な状態が続く可能性が高いのである。

 これは見方を変えれば、醜いこき下ろし政治形態を少しだけ脱却出来る良いチャンスかもしれない。

 お互いの良い提案は受入れ合う大連立的発想でも進めなければ、今後数年間の国政の停滞での最大の被害者は、もちろん国民なのである。

 与野党政治家が激論するテレビ番組がよくある。
 自民党・民主党、結果から言うと、その考え方の真髄は殆ど変わらない場合も決して少なくない。
 まさに細かな政策論の大ディベート大会に見えてしかたがない。

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 ついこの前、呑み屋で酔っ払いがからんできた。
 口論には自信が少なからずある。
私の場合、冷静にニコニコして論理的に反論する。まさにディベート式である。
 これが酔っ払いには一番しゃくにさわるらしく、向こうはどんどんヒートアップしてくる。

 そこで仕方がないので、「お会計!」と店を出てきた。
 こんな酔っ払いオヤジに対するディベートでは100%勝てるのであるが、本当のけんかにでもなると滅法弱いからである。




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