エコロジーふとん専門ネットショップ グッスリー
2005/01/30
技術立国ニッポンって大丈夫?
 今から何と7年3ヶ月前の1997年10月、アメリカのフロリダ州ケープカナベラルから打ち上げられた土星探査機”カッシーニ”が12億キロ彼方の土星を回る軌道に昨年無事到着した。 
(今年最初のコラムなので、少しだけ知的な話題にする事とした)

その後”カッシーニ”に搭載された小型探査機”ホイヘンス”が切り離され、今月14日土星最大の衛星”タイタン”の何と!マイナス180度の地表に無事着陸をしたのである。
 母船”カッシーニ”を経由して、”タイタン”の地表写真や観測データを早速地球まで送ってきている。
  ・・・だからどうした?っていう人はこのあと読まない方がいいかも?)

 と言っても、あまりにも遠いので、秒速30万kmの電波でも、地球にデータが届くのに1時間以上もかかるのである。
分かりやすく例を上げると、あなたが”タイタン”にいて地球の彼女に携帯を掛けたとすると、「もしもし」と言ってから、「は〜い」と返事がくるまで、電波が1往復するので2〜3時間かかるのである。
(これでは、ラブラブコールするのには3日は徹夜しなければならない)

 ここまで遠いと、地球からのリアルタイムの遠隔操作をしようとしても、地球からの指令電波が届くまで1時間以上もかかる訳であるから、探査機は殆どが自動に動いてくれないと着陸など当然無理なのである。
(2階への階段を上がり終えて、何しに上がったか忘れてしまう誰かさん?より、よっぽどお利口さんなのである)

 ちなみに”カッシーニ”の名前の由来は、フランスの天文学者で、1675年に土星の複数の輪を発見している。一番外側の大きな隙間を”カッシーニのかんげき(間隙)”と呼ばれている事で有名である。
  (もちろん”秀樹かんげき!”と関係は無い)

”ホイヘンス”とは、1665年に”タイタン”を発見したオランダの天文学者の名前から取られている。
(ちなみに”タイタン”とはマツダのトラック名や、爆笑問題・長井秀和の所属事務所名から取ったものではなく、ギリシャ神話に登場する4種の巨人族の一つから取った名前である)

340年前、当時の天体望遠鏡で土星の直径の約23分の1の”タイタン”を発見した”ホイヘンス”が、自分の名前が付いた探査機が着陸して地球に観測データを送って来る事を想像出来ただろうか?
(現在、土星には実に31個の衛星が確認されていて、最も大きい衛星が”タイタン”で、直径が月の約1.5倍程ある・・・ 31個もよく数えたもんである。私は天文学には絶対向いていないと断言できる)

 すぐに公開された”タイタン”の地表の写真を見ると、メタンの海とその海岸線や山脈など、地球と驚くほどよく似ている。
 雷の音を収録出来ればと搭載された”ホイヘンス”の音響センサーが捉えた、衛星”タイタン”の大気中の降下時音も、既にインターネットで公開されている。

さて、”タイタン”を何のために調べるかというと、原始の地球に非常に良く似ており、生命の起源を探る上においても、重要な成果が得られるかもしれないのである。
(生命の起源より、おマンマ食べる事の方が重要な人が多いのが現実であるが・・・)

子供時代、アポロ11号の月面着陸をライヴで見て育った我々以上の世代には、私のように潜在的に宇宙計画に特別の思いがある人が少なく無いかもしれない・・・   (やっぱ少ないかなぁ〜。 もっぱら関心は”ペ様”っていう人も少なく無いし・・・)

何はともあれ、その技術力はただただ「スゴイなぁ〜」と関心してしまうのである。
(”カッシーニ”は今後4年も、土星を観測し続け、膨大な観測データを送ってくる予定である)


さて、それに引きかえ我が国の宇宙開発の現況と言えば、何とも寂しい限りである。
度重なるH-2ロケットの打ち上げ失敗で、後継のH−2Aロケットに切り替えられたが、2003年11月H−2A 6号機の打ち上げ失敗で、日本の宇宙計画は大きく遅れている。

H−2A 7号機の打ち上げが大幅に遅れたとばっちりで、だましだまし使っていた気象衛星”ひまわり5号”は寿命切れし、これまた設計寿命切れであるアメリカの”ゴーズ9号”を借りて綱渡りの気象観測をしているのはご存知?の通りである。






           UP

2003年に寿命が尽きた”ひまわり5号”も、アメリカから借りている”ゴーズ9号”も同じ1995年に打ち上げられたロートル衛星なのである。
(ちなみにロートルとは中国語の老頭児=年寄りの事である。若い人はそもそも初耳??)

もし、ゴーズ9号が突然お亡くなりになり、今年2月末にH2A 7号機で打ち上げ予定の気象衛星ひまわり5号の後継機となる運輸多目的衛星(MTSAT)にアクシデントがあれば、日本をはじめ環太平洋諸国の気象予測に重大な影響が出るのは必至である。
 かつて日本の台風観測に活躍した富士山頂のレーダー測候所は既に取り壊している。
(一体、去年はいくつの台風が上陸したと思っているんだ!・・・  正解はこれまでの最高の6個を大幅に更新して10個でした)

何も”カッシーニ”のように12億キロ彼方に探査機を送る訳ではない。
上空3万6千キロの静止軌道に衛星を打ち上げるだけのことである。
(12億キロと3万6千キロの違いって、頭で理解しづらいが、12億円と3万6千円で考えるとぜんぜん違う事が分かる)

さて、国の技術力には、もちろん得意・不得意分野があるので、宇宙技術だけで比べてもあまり意味が無いかもしれない。
日本の先端技術や家電製品や自動車などの民生品の一部は、世界的な競争力を持っている。
(有人ロケットを上げているロシアではあるが、我家ににあるロシア製品といえばマトリョーシカ人形くらいである)

また、ロケット技術の根底には、ミサイル開発という軍事技術が基礎となっている場合が殆どで、日本の場合は、憲法解釈上、長距離ミサイルの開発はもともと範疇に無かったので、大型ロケットの自力開発は全てゼロからのスタートとなった。
(その上、宇宙予算はアメリカの10分の1程だ!)

だから、失敗続きもある面致し方無い・・・
      では困るのである!

資源少国である日本は、その技術力で戦後の焼け跡から奇跡の復活を遂げてきた。

宇宙ロケットは、何十万という部品と技術の集合体であり、日本の総合技術力が試されるのである。
それゆえ、技術立国日本の象徴であるH2A 7号機の打ち上げを無事成功していただきたいと、心から願わずにはいられない一人である。
(普段はそんな事、微塵も考えていないだろうって?・・・      そりゃあ布団屋だし・・・)


学生の理科離れが言われている。
日本の技術力を支える製造業の生み出す付加価値は国内総生産(GDP)の20%を切ってしまった。
フリーター・パラサイト・ニート・・・と技術立国の足元も何だか怪しくなってきた。

そんな中、ノーベル賞級発明と言われる青色発光ダイオードの開発者である日亜化学の元社員中村修二氏が、発明の対価を求めた控訴審で和解が成立した。
この発明で得られた会社の利益は1208億円と一審で認められたが、結局の所、遅延損害金を含めて中村氏は約8億円で和解せざるをえなかった。

1208億円に対する8億円が安いか高いか、評価はそれぞれかもしれないが、私は安すぎると断言する。

確かに、大発明が出来る保証も無いのに、研究出来る環境を作ったのは、企業の判断と資金である。更に実際の製品化のためには生産工程まで含めて、多くの技術者の総合力無くしては不可能なのは事実である。

しかしながら、科学に夢を持って、研究を進めて出来上がった大発明の対価が、有名なプロスポーツ選手の年某よりも少ないのでは、子供達の理科離れも分からないでは無いような気もしてくる。

中村氏はそんな日本にとっくに見切りをつけて米国に渡ってしまっている。
(技術立国日本の頭脳流出が進んでいる)

青色発光ダイオードの発明で、すでに携帯電話用超小型バックライトや次世代DVDの記録素子、大型ディスプレーから信号機の果てまで、その活用は大きく広がっている。
今年の冬のイルミネーションにも、既に青色発光ダイオードを見かけるようになった。

青いイルミーネーションを見つけたら、技術立国日本の将来をちょっと考えてみませんか?


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